平成23年7月24日(日)に石川町中央体育館で行われた昇級昇段審査において、玉川分支部から5人目となる弐段が誕生しました。
大越和彦指導員は2度目の挑戦で型審査を合格し、今回晴れて20人組手挑戦となりました。
東日本大震災による変則的な日程で、たった2ヶ月しか調整期間がありませんでしたが、これまでの積み重ねにより見事な20人組手完遂となりました。
それでは、大越指導員の弐段への軌跡をご覧ください。
◆20人組手完遂までの軌跡
一人目 会津道場の川綱一平さんと対戦。
技を受けたら必ず返す冷静な戦いを続ける。
相手が後ろ回し蹴りで攻撃するも軸を崩さず、しっかりと捌けている。
二人目 会津道場の高橋拳君と対戦。
序盤にタイミングよく下段蹴りで相手を倒し、その後も下段の内股、右の上段と積極的に攻撃を仕掛けていく。
終始大越指導員のペース。
三人目 浅川道場の須藤三成君と対戦。
果敢に前に出て、突きの連打と後ろ回し蹴りで攻める相手を十分にかわし、下段蹴りや前蹴りで相手の間合いにさせない。
右下段の足掛けにより相手を倒す。
四人目 石川道場の吉田勇輝君と対戦。
いつも稽古を一緒にしている相手。
相手の技を引き出しながらも、左の突きや上段回し蹴りを相手に効かせて、ここぞという時に前に出て行く大越指導員。
五人目 いわき道場の一般男子と対戦。
フットワークが軽く、後ろ回し蹴りや回転の速い突きなどを繰り出してくる相手に、少し疲れが見えたか手が止まってしまいそのまま終了。
六人目 会津道場の五十嵐指導員と対戦。
五十嵐指導員の流れるような組手により、大越指導員が少しずつ後ろに下がっていく。
下段回し蹴りを出来る限りもらわないよう捌いて凌いだ。
七人目 須賀川道場の古川達也指導員と対戦。
玉川分支部の出張指導員を務める古川指導員が相手。
長身から繰り出す体重を乗せた突きと蹴りに苦しむ大越指導員。
後半は蹴りを返すも、あまり力が出なくなってきた様子。
八人目 石川道場の吉田謙太君と対戦。
いつも大越先生に組手の相手をしてもらっていた石川道場生。
打ち下ろすような突きと下段でテンポよく攻撃してくる相手に、重いワンツーと突き放すような前蹴りで応戦。
相手が突きを出すタイミングでうまく下段回し蹴りが入り、相手が少しよろめく。
九人目 会津道場の高橋佳秀指導員と対戦。
20人組手が始まる前からなぜか闘志を燃やしていた佳秀指導員。
始まったとたんに大越指導員を倒すために強烈な下段回し蹴り、突き、前蹴りで襲う。
近づいてくる相手に少し距離を取って戦う大越指導員。
なおも前に出て倒しに来るのをしのいで終了。
十人目 いわき道場の野口義光指導員と対戦。
素早い左右の中段突きから下段、上段と回し蹴りを連続で放っていく野口指導員を、しっかりと受け返しで対応。
十一人目 会津道場の川綱さんと二度目の対戦。
本日二度目の対戦。
安定感のある構えで、技をもらっても軸を崩さない大越指導員。
既に10人戦ったとは思えない位落ち着いて技を出していた。
十二人目 須藤三成君と二度目の対戦。
相手が躍動感のある上段前蹴りや上段回し蹴りを出すも、単発のため大越指導員が難なくかわす。
この日初めて大越指導員が上段後ろ回し蹴りを放ち、三成くんの首にかかるがクリーンヒットにはならなかった。
十三人目 高橋佳秀指導員と二度目の対戦。
先ほど倒せなかった悔しさからか、並んでいた息子の拳君と入れ替わり再び出てきた佳秀指導員。
まだまだ元気な佳秀指導員が全力でぶつかって行き、まるでトラックと正面衝突をしているような衝撃が大越先生を襲うが、後ろに下がりながらも突きを返していた。
十四人目 吉田勇輝君と二度目の対戦。
足をかけて相手を崩しにかかる大越指導員。
相手も必死に技を出してくるが、大越指導員の突きで体が宙に浮いてしまう場面も。
十五人目 いわき道場生と対戦。
相手がワンツー下段、ワンツー中段と素早い動きを見せるが、大越指導員の下段蹴りで相手がバランスを崩ししりもちをつく。
その後、相手の右上段回し蹴りが大越指導員の顔に当たるも、技有りには至らず。
十六人目 いわき道場の木村指導員と対戦。
手足の長い前蹴りと突きの連打が大越指導員をとらえ、防戦一方となる大越指導員。
疲労のピークがきたのか後ろに下がってしまう。
十七人目 会津道場の高橋力也指導員と対戦。
大越指導員より一回り大きな体から的確にきついポイントを攻めていく力也指導員。
下段蹴りをもらい、少し前かがみになりながらも突きを返していく。
初めてよろめくが何とか耐えた大越指導員。
十八人目 いわき道場の永山指導員と対戦。
永山指導員の蹴りの後の突きが早く、的確に大越指導員のみぞおちを捉える。
足を刈るような下段回し蹴りで初めて大越指導員が倒される。
ここが一番の正念場であった。
倒された後も容赦なく永山先生の攻撃が続き、防戦のまま終了。
十九人目 玉川道場の酒井裕之指導員と対戦。
これまで供に玉川分支部を引っ張ってきた酒井指導員が相手。
大越指導員が息を吹き返したかのように、突きと蹴りを出してくる。
酒井指導員が膝をしっかり上げてまわし蹴りを繰り出すが、それをしっかり受ける。
岡崎師範から「どうした。頑張れ。」と激が飛び、大越指導員が力を振り絞って技を出す。
二十人目 玉川道場の増子広行分支部長と対戦。
最後は増子分支部長が相手。
相手の前蹴りをしっかり捌いて下段回し蹴りで返す。
大越指導員の内股蹴りが相手を捕らえぐらつく。
相手の右脇腹に鍵突きと右下段蹴りのコンビネーションを受けて後ろに下がるも、大越指導員の左突きと下段蹴りで前に出る一進一退の攻防戦で終了。
危なげない組手で見事20人組手完遂!
◆黒帯に聞け! The 一問一答
さてここで、ガラリと雰囲気を変えて、大越弐段にいろいろとインタビューをしてみましたのでご覧下さい。(インタビュアー:増子サヤカ)
Q 弐段の審査を受けようと思ったきっかけはなんですか?
A 特に自分では意識はしていなかったのですが、岡崎師範よりそろそろ頑張ってみなさいと言われ、決意しました。
Q 弐段を受けるのに大変だった事はなんですか?
A 特に型です。腰が高く、緊張しやすく、体も硬くて重い、それに沢山やる事
(補強・移動稽古・四股立ち・スクワット前蹴り・バービー・棒術・サイ)があったので大変でした。
Q 審査前の気分はどんな感じでしたか?
A 緊張していて、道場生、力也先生、増子先生の掛けてくれる言葉が頭に入らないくらいでした。
Q 何を考えながら組手をしていましたか?
A いつもお世話になっている須賀川道場の吉田師範代が審判をして下さいました。
その吉田師範代からのアドバイスを思い出し、突き・蹴りをもらうとダメージになるので、
もらわないようにもらわないように…と考えていました。
Q 印象に残っている相手や組手の内容などはありますか?
A 特に会津から組手の相手をしてくれました高橋佳秀先生です。
高橋先生は親子で組手の相手をしてくれました。拳君ありがとう。
Q 20人組手完遂直後はどんな気分でしたか?
A やっと終わったと思いましたが、次に一緒に稽古してきた白河道場の田村君の二十人組手があったので、
座らずに最後まで応援しようと考えていました。
Q 20人組手を終えて得たものや心境の変化はありましたか?
A すぐには変化はないですが、気持ちを新たに責任・自覚・自信を持ち、稽古したいと思います。
沢山の道場生の応援があり嬉しく思いました。
Q ズバリ、10人組手と20人組手の違いは?
A 人数が倍になるんですが、肉体的にも精神的にも強くならないと大変だとやってみて感じました。
(本当は技術も向上しないといけないんですが、技術の方はまだまだでした)
Q 審査の前後にかけられた言葉で心に残っているものがあれば教えてください。
A 審査前は「応援してっから頑張って」
審査後は「お疲れ様でした。おめでとう」
これが普通なんですが忘れずに心に残ってます。
Q 昇段に向けてどのような稽古に力を入れましたか?
A 岡崎師範より教わったミット打ち、それからスタミナ強化ですね。
体が小さいので、大きな人の相手をするのに体を大きくする筋トレをしたり、型では腰が高いので、
足を鍛えて腰を低くするために足腰の強化のための筋トレなどをしました。
また、痛さに慣れるために道場生に腹打ちや下段蹴りなどをしてもらいました。付き合ってくれた道場生に感謝してます。
Q どんな黒帯(指導者)を目指したいですか?
A 前の初段の時にも言いましたが、強くて優しく誰からも尊敬される岡崎師範の様になりたいです。(目標は天高く)
Q 弐段を目指す後輩へアドバイスをお願いします。
A やる事がいっぱいですが、強い自覚と強い体が身についたら、自信を持って頑張って欲しいと思います。 押忍。
以上で質問は終わりです。ご苦労様でした。
最後に、弐段取得の際にも作文を書かされるそうですのでこちらに載せたいと思います。
◆黒帯への軌跡
自分が空手を始めて今月で丁度8年になります。8年前は、玉川道場の週2回の稽古でしたが、現在は岡崎師範のいらっしゃる石川道場、吉田先生のいらっしゃる須賀川道場、田村先生の白河道場と毎日、毎週、空手の稽古日となり、大量の汗を流しながら充実した空手を中心とした生活をしています。
空手を8年続けていると、県内各地は元より県外の先生方、先輩方、道場生より名前を覚えていただき、大会または合宿等で気軽に声をかけて下さる様になり、空手を通しての財産が増え、とても嬉しく思います。
初段を取得し三年がかりでようやく弐段を取得する事が出来ました。特に今回の弐段取得までは思い出深いものになりました。昨年の12月に型審査を受審しましたが、まだまだという事で保留となり、再度今年の3月13日に型審査受審の予定でしたが、あの大震災が発生、審査は無期延期となりました。余震が頻発、建物が被害を受け、稽古が再開できたのは震災から一ヶ月後からでした。同じく被災されているのに支援物資を沢山届けてくれたり、一緒に稽古をして勇気付けたりと極真館の絆を感じました。ありがとうございました。
そんな中、5月に審査会が開催されました。自分が一番難しいと感じたのは型でした。緊張すると余計に腰が高くなり、体が硬くなるからです。型審査の前に補強があります。体重が重い分、足がパンパンになり心臓がドキドキして凄く緊張し、途中記憶が抜けるくらい苦しかったのを思い出します。型・棒術・サイとなんとかこなしましたが、緊張の連続で体はヘトヘトでした。それでもなんとか型の合格をいただきました。
次は20人連続組手です。震災の影響により7月に次の審査会が決まりました。岡崎師範がミットの練習に付き合ってくださいました。最初は暑くて5セットで息切れで、師範についていくのがやっとでした。岡崎師範にご指導いただいたミットのメニューと打たれて痛さに負けない、痛さに耐える練習に絞り、道場生と稽古しました。骨太の道場生がいて、彼の素手・素足の打ち込みは痛かったのを覚えています。沢山の道場生の協力により、おかげ様で20人連続組手を完遂する事が出来ました。今は皆に感謝の気持ちで一杯です。審査当日は暑く、熱中症対策が必要でした。ある保護者の方から梅干が沢山入った容器をもらい、組手前にちょこちょこ食べていました。組手中は梅パワーで不思議と喉の渇きを感じませんでした。
今回、弐段取得の為に岡崎師範を始め、馬場先生、増子先生、酒井先生、田村先生、石川・玉川・須賀川・白河道場生の皆、保護者の方々の協力、応援があったからこそ取得出来ました。本当に有難うございます。
最後に20人組手の相手をして下さいました先生方、先輩方、道場生に感謝します。
今後、極真館の発展の為、福島県の発展の為、指導者として頑張りたいと思います。押忍
大越 和彦 |
◆あとがき
玉川分支部で今一番稽古している大越指導員。
月曜・木曜は玉川分支部、火曜・土曜は石川道場、水曜は平田道場、金曜は白河道場、日曜は須賀川道場で指導しており、福島県支部にとって欠かせない存在と言っても過言ではないでしょう。
本人にとって、20人組手は未知の世界で不安だらけのようでしたが、皆から「大越先生なら大丈夫」と言われ、それが逆にプレッシャーを感じていたようでした。
指導をしていると自分の稽古は思うようにできません。限られた時間の中で、うまく時間を作って効果的に稽古をしてきた大越先生を私もずっと見てきました。稽古が終わった後、更に上を目指す子供達のために指導に付き合い、それで子供達からパワーを貰っていたように感じます。
20人との戦いでは、キツイはずなのに堂々とした戦いぶりに周囲の人達も安心して見ていられたと思います。こういう戦い方ができるのも、日々の稽古の積み重ねの賜物です。大越先生の経験を是非とも今後の指導に生かしてほしいと感じます。
分支部長 増子 広行 |