十人組手後半の大越さんの必死な表情


 平成19年3月21日に玉川村のたまかわ文化体育館にて行われた昇級昇段審査会にて、めでたく玉川分支部にもう一人の黒帯が誕生しました。
 普段から努力を怠らない大越和彦初段ですが、そんな大越初段でも黒帯への道は簡単ではなかったことがうかがえます。
 それでは大越初段の黒帯への軌跡、ご覧下さい。
 


10人組手完遂までの軌跡1人目

 一人目 須賀川道場の古川達也さんと対戦。
古川さんが長身から繰り出す下段蹴りと中段回し蹴りをタイミングよく入れていく。中盤は下段突きで攻め込まれるが、突きと前蹴りで応戦。
2人目

 二人目 二人目になって落ち着いたのか冷静に捌いて突きと回し蹴りを放つ。
大越さんの下段蹴りで少し相手が下がる。
3人目


 三人目 白河道場の田村和彦さんと対戦。
田村さんの重い攻撃をうまく受け流しながら下段蹴りでポイントを奪っていく。手数も相手より多く出ており優勢に進めていく。



4人目 四人目 いわき道場の中学生女子と対戦。
女の子だが組手の大会では常連の強者。相手にうまく内股を攻撃され体力を奪われていく。手数では負けているが大越さんも重い下段で反撃。
5人目


 五人目 いわき道場の高校生女子と対戦。
同じく組手の大会では常に入賞している相手。次々に強烈な中段回し蹴りが襲い掛かる。内股を狙われバランスを崩し、相手の上段回し蹴りにひやひやさせられながらも、突きで間合いを取りなんとか持ちこたえる。

6人目

 六人目 いわき道場の一般部男子と対戦。
いきなりの猛攻で大越さんがぐらつく。相手の攻撃でダメージを受けてしまい返す力が出ない。手数も止まりつらい時間帯が続くがなんとか終了。


7人目
 七人目 大越さんの良き空手仲間でもある会津道場の高橋力也さんと対戦。
容赦のない突きの連打と力強い前蹴りの猛攻。高橋さんはノーガードで大越さんに攻めさせる余裕ぶり。タフな大越さんも耐えられず後ろに下がりっぱなし。
 
8人目 八人目 白河道場の円谷祐介さんと対戦。
ラストが近づいたことで息を吹き返し、攻めに転じる大越さん。大越さんが内股を蹴り、相手のバランスを崩させる。


9人目
 九人目 全日本大会出場経験もある玉川道場の矢部洋指導員と対戦。
連続の突き蹴りのコンビネーションで大越さんの攻める隙も無く終了。



10人目 十人目 最後は玉川道場の酒井裕之指導員と対戦。
ずっと一緒に稽古をしてきた仲間ではあるが、だからこそ容赦なく攻めまくる酒井指導員。酒井指導員が下段で効かせた後、思い切りのある突きで大越さんを苦しめる。大越さんも最後は苦しみながらも前蹴り、下段蹴りで返し何とか10人を完遂。共に戦った玉川道場の同志



 共に10人組手を乗り越えた玉川道場の仲間同士で記念撮影をした大越初段。
 空手道を愛する仲間として絆は更に深まったことでしょう。
 一生忘れられない思い出になったのではないでしょうか。


黒帯に聞け! The 一問一答
 さてここで、ガラリと雰囲気を変えて、大越初段にいろいろとインタビューをしてみましたのでご覧下さい。(インタビュアー:増子サヤカ) 


Q 10人目との組手が終わった時、何を考えていましたか?

A 汗をかいた手で岡崎師範と握手は出来ないと思い、道着で汗を拭かなきゃ!と思いました。その後はやっと終わった安堵感から何も考えてなかったです。


Q 10人と戦ったわけですが、特に印象に残っている相手や組手の内容などはありますか?

A 10人全員が組手の上手い先輩・先生でしたので、全員が印象に残っています。組手中は本気モード全開でしたから、痛いとか辛いとかより先に、まず自分の弱い気持ちに負けないように頑張りました。押忍!!


Q 審査の前後にかけられた言葉で心に残っているものがあれば教えてください。

A  審査前は「大越さんだったら大丈夫だよ!」が一番多かったですね。『大丈夫だよ』が心身的にプレッシャーになりきつかったです。
   それでも、自分も昇段審査を受ける人に対しては、多分同じ言葉をかけてしまうと思います。
   審査後はある人から「10人組手を見ていて感動した」と言われました。その言葉を胸にこれからも感動させられるような空手をしていきたいと思います。


Q 昇段に向けて自分を追い込む中で一番辛かったことはなんですか?

A 体力作りです。昨年仕事が変わって毎晩残業続きで空手が出来ない日々が続き、空手が出来ないことがストレスとなり6sも落ちてしまいました。そのせいで基本稽古でも組手でも力が入らず、保護者の方からは「小さくなったんじゃない?」なんて言われてました。今ではなんとか元の体重に戻りましたが。
   走り込みが苦手でしたから週二回はウェイトをやろうと決めベンチを始めたり縄跳びを始めました。縄跳びは簡単に出来そうですが、最初はかなりきつかったです。一分跳ぶのがやっとでした。審査が終わり最近は縄跳びをさぼっているのでまた始めようと思います。押忍!!


Q 今までの空手人生の中で『これがあったから今の自分がいる』と思うことはなんですか?

A 空手という共通の武道仲間が居たから今の自分がいると思います。
   稽古や組手の大会はキツイ・辛い・痛い・プレッシャーなど、といいことばかりじゃないけど、空手道を愛する気持ちはみんな一緒ですからね。
   また素晴らしい指導者、先生方に出会ったから今の自分がいると思います。押忍!!


Q 10人組手を終えて、自分の中で空手に対する考え方や人生観など何か変化はありましたか?

A 今まで(茶帯)は黒帯の先生方から教わる・指導される立場でしたが、黒帯になったということは正確な動き・立ち方など今度は後進に教える立場になるので責任が発生することになります。黒帯としての責任と自覚を持ち、これからも稽古に汗を流したいと思うようになりました。
  また、黒帯になるための厳しさと人に対する優しさを勉強させられました。こんな経験は他のスポーツなどではなかなか経験出来ないと思いました。押忍!!


Q どんな黒帯(指導者)を目指したいですか?

A もちろん岡崎師範のような黒帯を目指したいですね。
   誰からも慕われ、尊敬され、頼られるような存在になれるように更に稽古を積んでかっこいい男を目指します。押忍!!


Q 黒帯を目指す後輩へアドバイスをお願いします。

A 上級者が道場の稽古の中で全てを稽古するのは無理です。稽古以外の時間を少しでも作り自主トレをして体を鍛えたり、型を打ったり、実践空手を読んで組手のイメージトレーニングをしたりして、来るべき日に備えられたらいいと思います。
   来るべき日は自分の気持ちとの闘いです。自分の気持ちをしっかり持ち、相手に立ち向かう姿勢・態度・強い気持ちを持って頑張れば目標は達成されます。その為にもまず道場の稽古を休まない!!指導くださる先生の話を良く聞き、大きな声で挨拶したり、気合いを入れるようにしましょう。最近はどこの道場に行っても気合が小さいように感じられます。稽古に行けば必ず得られるものがあります。一つでも自分のものになるように努力し稽古を頑張りましょう。押忍!!



 以上で質問は終わりです。大越さんご苦労様でした。
 

 最後に、黒帯を取得すると必ず書かせられる作文があるのですが、空手を始めたきっかけや黒帯を取ろうと思った経緯などがまとめられていますので、こちらに載せたいと思います。


黒帯への軌跡

 私が極真空手と出合ったのは平成15年8月の暑い季節でした。
 知人から極真空手の道場があることを聞き、すぐに扉を叩きました。知人と三人で入門しましたが、私以外の二人はいつのまにか名前だけの存在になってしまい少し残念な気持ちです。
 玉川道場で初めて増子先生と出会いました。私に気さくに声を掛けてくださり、緊張で体がガチガチでしたがすぐに打ち解けることが出来ました。増子先生の気配り、優しさは今も変わらずです。
 玉川道場の稽古は毎週月曜日と木曜日の週二回、二時間です。始めた頃は体が熱く滝のような汗が流れ、息切れもし、体も硬く筋肉痛の日々でした。
 私は興味のあることには熱中してしまいやすく、稽古量を増やしたいと言ったら先輩から石川道場を教えていただき、そこで岡崎師範と出会う事が出来ました。まだ白帯でしたが何度か石川道場に通ううちに名前を覚えていただきました。増子先生いわく名前を覚えてもらうまで五年はかかったと言ってました。名前を早く覚えていただき光栄に思います。
 今では岡崎師範のいらっしゃる石川道場、吉田先生のいらっしゃる須賀川道場、白河道場、玉川、平田道場と毎日空手の稽古日になり、充実した日々を過ごしてます。特に緊張するのが岡崎師範のいらっしゃる石川道場です。緊張はしますが、気合の声を誰よりも大きく出して稽古するように心掛けています。
 昨年、自分の都合で長年勤務した職を辞することになり、まだ先も決まっておらず何も手につかない時期がありました。
 そんな中でも空手の稽古だけは休まず通いました。岡崎師範を始め、増子先生や道場生にアドバイスや励ましの言葉をいただき、今では良職に就く事が出来ました。もしあの時、大げさかも知れませんが部屋にこもりきりになっていたらどうなっていたか分かりません。空手をしていて良かったと思える自分がここにいます。今は感謝の気持ちで一杯です。
 石川町内に勤務している今は、毎日充実した日々を過ごしています。仕事も大事ですが空手を中心に毎日が動いていると言っても過言ではありません。各道場に出稽古でお世話になり、先生方、先輩、道場生から名前を覚えていただいたり、気軽に声を掛けていただいたりして極真を愛する仲間が各地に増えました。尊敬、元気などは空手を通して知り得た一番の宝物・財産となりました。
 また、昇段審査の十人組手の相手をして下さいました先生方、先輩方ありがとうございました。ガードが下がり始めた時に頑張れーと応援して下さいました皆様に対しても心から感謝の気持ちで一杯です。その気持ちを大切に黒帯の先生方に少しでも近づけるように、これからも稽古に励み、自分を鍛え、尊敬・感謝・基本を忘れずに更に自己のステップアップに向けて汗を流したいと思います。
 最後まで読んでいただきありがとうございます。押忍。

 しかし、黒帯をとったからと満足せずに、これからも大会などいろいろなことに挑戦し、常に上を目指して頑張って行きたいと思います。

大越 和彦

あとがき

 今回黒帯を取得した大越さんは、月・木曜日は玉川分支部、火・土曜日は石川道場、水曜は平田道場、金曜日は柔道、その他須賀川・白河・会津への出稽古など、ほぼ毎日のように鍛えてきた努力の人です。
 大会へも積極的に参加し数え切れないほどの実績をあげていますが、それにおごることなく姿勢はあくまで謙虚です。
 また、気は優しくて力持ちとは大越さんの為にあるような言葉で、子供達にもとても人気がありますが、ただ優しいばかりではなく時には厳しく後輩の組手を相手するなど道場生からは一目置かれる存在でもあります。
 そんな大越さんが黒帯を取得したことは玉川道場の財産でもあり、おおいなる期待を込めて日々精進していただきたいと願います。

分支部長 増子 広行